CAMPER オールソールのその前に…。

カンペールのソール交換は、しばしば断るお店が多いようで、
巡り巡って当店にたどり着かれる方もしばしばいらっしゃいます。

その中には、何年も前にソールが割れてしまったけど、あきらめきれず、捨てずに保管されていたり、
新婚旅行でスペインに行かれ、夫婦揃って購入した思い出の靴なので
どうしても治して履きたい方など。

最近は、海外在住の方からもご依頼頂く様になり、スペインの本店で断られたブーツも、
先日、はるばる大陸を超えてやってきたりしています。

カンペールのソールがなぜそんなに修理を断られるのか、ですが、
それはソールと本体との組合わさり方が特殊であるという点だと思います。

なかには一般的なものと変わりない普通の仕様のものもありますが、
それはソールを剥がしてみないと分からないモデルだったりします。

ですので、一旦ソールを剥がしてみたはいいが、手に負えないモデルだった場合に
お客様に、「すみません、ソール交換できません…」
と、ソールを剥がしたまま返すとなるとちょっとと。
ですので、リスクを負ってまで受け付けないということなんだと思います。

カンペールのソールで、穴があくまで摩耗して交換という方というのは
一割ぐらいの方かと思います。
大多数の方が、ソールが劣化し割れてしまうというパターンだと思います。

当初、日本特有の湿気の多い気候が原因なのではないかと思っておりましたが、
海外在住の方からご依頼頂くようになると、その理由も当てはまらなくなり…。

そもそもカンペールで使用されているウレタン系の素材は、ほかのスポンジやラバー
素材などに比べますと、比較的劣化が起こり易い素材ではあります。

劣化が始まりますと、大抵は屈曲部分でぱっくりと割れてしまうか、
荷重が掛かるヒール部分で砕けてしまいます。

劣化というのは、使っても使わなくても進行してゆきますので
セールで購入したカンペールが、「三回履いたらソールが割れた!」という方も
いらっしゃいました。また、オークションでプライスタグが付いたままの新品を
購入された方などは、足を入れたら割れた…なんていう場合も。

どちらかというと、履かずに箱にしまいっぱなしだったり、靴棚に保管しっぱなし
という環境のほうが、劣化が進行し易いかと思います。
空気中の湿気やガス等と反応して劣化して行きますので、空気が滞っている環境ですと
それだけ影響を受け易いかと思います。

なお、ソールが劣化してべたべたしてきた際には、革に付着しますと採れない事もありますので
お気をつけ下さい。郵送でご依頼頂く際なども互いのソールで革が汚れないように
梱包して発送して頂ければと思います。

また、割れたソールはソール交換の際に、ヒールの高さのバランス等を確認するのに
必要ですので捨てずに梱包してください。

カンペールのインソールは、クッションが厚いモデルが割合たくさんあります。
その場合ですと、靴底が痛んでいてもインソールのクッションの厚みで気づかずに
中底まで痛んでいる場合がしばしばあります。

ソールを剥がしてみますと、既に中底はバラバラになり、どこかへ旅立っている場合もあります。
靴の内部からどこへ消えるのか… これはカンペール七不思議の一つになっています。

もちろんこの部分もソール交換の際には、補修、交換を行っております。
この部分の補修は、ほとんどがサービスになっております。

当店では基本的にカンペールの部分補修というのは行っておりません。
お預かりした段階で外観に異常がなくても内部で崩壊が始まっている場合があります。
そのような場合は補修作業中に割れてきてしまいます。

また、ソールに底縫いが掛かっている靴の場合ですと、その糸が切れている状態で
部分的にかかと等を補修しても、本体と接合している糸が切れていますので本体から
補修した土台ごと剥がれてくる可能性もあります。

一般的な靴の場合ですと、底縫いの糸が切れても、併用された接着である程度
ソールは固定されているのですが、カンペールの場合ですと素材的に接着剤が
効き難いせいか、メーカーでも殆ど接着剤で固定しておらず、底縫いの糸が
切れてしまうと簡単に剥がれてしまうモデルも多数あります。

また、例えばカンペールの場合、ハイヒールモデルでもヒール部分まで
同様のウレタン素材にて一体化して製作されているモデルもあります。

そのようなモデルの場合は、例えば階段を降りている時に、ヒールが
割れてしまったりしますと、大怪我にもなりかねませんので、
部分補修は原則受け付けていない次第であります。
(ご了解の上、補修を受け付ける場合もあります)

カンペールのソールは、埋まっていたり中底が無かったりと特殊な場合が多く
また、そもそもソール交換や補修ができるように作られていません。

ソール交換の際には、全く同じソールでの交換ということは残念ながらできません。
オリジナルのソールは、メーカーしか持ち合わせておりません。
しかし、そもそもメーカーも持っていない状態です。

仮に、カンペールのソールが手に入ったとしても、当店では怖くて使えません。
というのは、結局は劣化し易いソールですので、材料として保管していても
劣化していきます。

という事は、ソール交換したのに一週間後に割れました…
なんて事になりかねませんので(なのでカンペールでも行っていないのだと思われます)。

ですので、既存の材料を用い、できるだけ雰囲気を近づけるように努力はしております。
または、ソール交換の際に自分だけのカスタマイズをされてみても宜しいかと思います。

もう少し軽いソールにしてみる、ソールの色を変えてみる、靴ひもに合わせて
赤いミッドソールのラインを入れてみるなど。
また、当店では基本的に長く履き続けられるような仕様にて、ソール交換を行っております。

ですので、オールソール後は、例えばかかとが擦り減ってきた際には
部分補修できる仕様にて製作を行っております。

また、使用する素材も劣化が起こり難い素材を選択し、ご提案させて頂いておりますので
「ソールがぱっくり…」などはありませんので、安心して履いて頂けるかと思います。

BLOGにて、日々の修繕過程など色々とご紹介しております。